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「待機児童を減らすポーズ」だけの厚生労働省 経営体を縛れば、保育所は増えませんよ

2010.2.2

日本の経済環境は、まさにデフレスパイラルに陥っているようです。物価が下がり、生活防衛で消費が手控えられています。増えるのは、生活困窮で「生活保護を受ける人だけ」ではないのでしょうか。自分の財産を持たなければ、「生活保護」の認定を受ければ、子どもを育てているというような条件が付いてくれば、最高額月額28万円位の保護費が税金から支給されます。今時28万円は、凄い金額ですぞ。フルタイムで熱心に働いて20万円もらえない人が一杯居てる中で、これは凄い大盤振る舞いになります。その点では、日本は、素晴らしい福祉国家なのです。そして、その福祉を扱う役所は、厚生労働省なのです。

それはそれとして、本題は、前回の文章の後日談で「入所を待つ待機乳幼児」のことです。またまた愚痴になりますが、お付き合いください。
今子育て中の若い夫婦の経済基盤は、3〜40年前の夫婦のそれと様変わりしてきました。当時は、終身雇用が当たり前であって、亭主の稼ぎが一家の生活を支えられる額に達していれば、奥さんは仕事に出ずに、家庭を守り専業主婦の道を選んだものです。しかし、現在の若い人達の結婚生活は、不安定で、不確かなものになってしまいました。亭主が、“立派な会社の正社員”であっても、ゆったりと安心して生活できないのです。なぜなら、“立派な会社の正社員”であっても、いつクビになるか解らないからです。
そのような基本的不安が付きまとうならば、「危険分散」は世の当然の対処法です。即ち、「奥さんも職業を持たねばならない」ということです。そのような状況を追認するならば、「結婚生活の必然的ニーズとして」、仕事中子どもを預かってくれる託児所なり保育園という社会的施設が不可欠になります。そのような社会情勢を考えますと、入所を希望する乳幼児は当分減りませんし、それらの施設が増加しなければ、子供を作れなくて少子化の更なる進展に繋がり、まさに国家基盤が危うくなるばかりです。こんなことは、わざわざ書くまでもない当然の前提だと思われますが。

それで、本論ですが、先に書いたように「千個所の保育園」が2千億円で建てられます。小学校の空き教室を改造するつもりならば、もっとウンと安く作れます。でも、一向に保育園は作られません。厚生労働省が補助金を出すと言って法律まで作っているのですが、現実には一向に保育園は、増えないのです。ただ例外的に東京都内では増えているようです。ナゼでしょうか?。
その答は、“保育園の経営母体の制限を設けたままだから”だと思われます。補助金に関して、厚生労働省のネットに調べに行きました。そうすれば、A4用紙で70頁に渡る書類が出て来ました。読めども読めども法律用語で細かく微に入り細に入った記述が続きました。中程で読むのを止めました。「保育所・保育園の経営体の制限条項」が出てきたところで続きを読む気がしなくなりました。
何のことはありません。経営体は、「市町村自治体・社会福祉法人・学校法人」でなければならないと出たからです。これなら、以前とまるっきり変わりません。「園の開設に当たりクリヤーしなければいけない設置基準が緩められた報道」ばかり流れますが、経営体の縛りを以前のままに据え置いていたのでは、新規に経営しようという人や企業体が参入する余地がありません。これでは、厚生労働省のポーズだけの宣伝活動だけに終わります(東京都の例外はありますが)。
ビルの一角で、保育園が開けるようになりました。園庭の面積を緩和します等、“素人目には、厚生労働省が保育園を増やすのに努力しているように見えますけれど”、実質は「増えなくても仕方がない」という馴れ合い仕事でやっているだけなのでしょう。だって、学校法人は、保育園事業以外では、少子化で経営が難しいですし、税収の延びない市町村自治体は、人件費負担にアップアップで「保育所は民営・払い下げ」方向にあります。東京都だけは例外なのです。お金持ちですし、入所希望の乳幼児がまた数で多いからです。社会福祉法人は、「今の安定経営」でよいのです。さらに経営を広げるだけの人材の余裕もないのが実情と思われます。経営に無理をして、園児に怪我をさせたりすれば、寛容性のない親がどれ程突き上げてくるかを考えれば、“新規の経営に乗り出すとは思えない”。どうです。これでは、以前からの傾向と何ら違わないじゃありませんか。「補助金を出すというのは、ポーズですね」。本気で「待機乳幼児」を減らそうとは思ってないのではありませんか。

補助金を出して、本当に保育所・園なりを増やしたいと思うならば、「有る程度信用できる民間人なりグループなりに経営資格を解放しなければ」、新規の保育所・園は出来ません。経営資格をそれなりの民間団体に解放するならば、補助金+借入金で、新規の保育所・園の開業に漕ぎつけられるでしょう。例えば、私の前任の短大の卒業生の多くは、幼稚園教員免許や保育士資格を持って卒業し、結婚退職して子育て中または子育てを終わった経験者が多数います。園長や主任の経験者も人材プールの中からはすぐに見付けられます。彼女たちが、グループを作り、経営資格を与えられるならば、大阪府・奈良県・和歌山県で、それなりの活躍が出来ること間違いなしです。それは、彼女たちの働きぶりの実績で証明出来ると思います。そういう意味から言えば、「保育所を本気で増やす気があれば、園長経験者+資格者+サポート部隊のグループ等に経営体に成れる」道筋を用意するべきでしょう。
結局は、「役所が、本気で国民のニーズに応える気があるかどうか」だということです。厚生労働省が直轄で保育所を運営するのなら話は早いですが、そうでないなら新規の保育所が作られていく施策を用意しないと「待機乳幼児ゼロ」は実現するはずはないじゃないですか。私見ですが、「待機乳幼児問題」に関する本当のネックを書いてみました。

投稿日 2010.2.2

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