ここからは、「放射性物質」に関する解説に入ります。

◎にわかに騒がれ出した「放射性物質」とは

原発の事故以来、「放射性物質、放射性物質と新聞でテレビで聞かない日がないくらいに出て来る言葉になりました」。しかし新聞やテレビ等で、かなりいい加減な説明がされていて、放射性物質というものがどんなもので、どのようなメカニズムで人体に害を及ぼすのかといったところがきちんと説明されていませんので、ここは初めに言葉の定義みたいなものから始めまして、正確を期したいと思います。
まず「放射性物質」とは、その物質から「放射線が出ている物質」と言えます。だから「放射性」とは、“放射線を出してくる性質”という意味になります。それでは、そこから出て来る「放射線」とは、どんなものなのだ?と話が展開すること必定ですね。厄介なのはそこなのです。この放射線が直接目に見えないのです。だから余計に危険を感じてしまうようです。しかし、微量の放射線は、我々の体からも出ているのです。そんなことを言えば、我々の体が放射性物質だと言うことになってしまいます。だから、ここでは原子力発電所から出てしまった放射性物質に限定して話を進めましょう。
「放射性物質」を考えるポイントが二つあります。その一は、物質という名前が付くように、放射性のあるなしを抜きにすると「物としては、見かけも存在の様子も“普通の物”と同じです。物としての扱いは、通常の物として扱えばよろしい(但し、強い放射能を持っている時は、直接触らない)」。二つめは、「見かけは普通の物と変わらないけれど、目に見えない放射線を自然に出していて、その放射線が人体に“ワルサをする”ということ」。この二点がポイントです。

◎原発事故と放射性物質の繋がり

テレビでも見られたでしょうが、発電所から灰色の煙が上がりました。あの煙の正体は、水滴も含んで放射性物質の微粒子です煙に見えるものは、大概の場合微粒子の集まりです。あの煙の微粒子が風に乗って運ばれるわけです。大規模な放出の時はたまたま北風で海側に飛ばされたのが、日本にとっては幸いしました。北風で避難所は寒くて大変でしたが、地上部分の放射能汚染は随分軽減されたのも事実なのです(昼間はしばしば海風で陸側に吹きますが)。微粒子にも、比較的粒の大きいものから小さいものまで、色々あります。そして粒子の大きさによって、振る舞いが違ってきます。粒子が大きいものほど重くて地上に早く落下します(原発の近くに落ちることになる)。小さいタバコの煙くらいの微粒子(直径1ミクロン:百万分の1㍍)くらいになると、なかなか落ちてこなくて、地球を回ってしまうくらいになります(地上に落下するのに1年くらい掛かる。ただ、微粒子だからその分、量的には少なく汚染の点では軽微で済むが)。この場合、外国にも迷惑を掛けてしまいます。
原発より20㌔以内が避難地域や30㌔以内が屋内退避が指示されているのは、微粒子のこのような性質を考慮した結果として、住民が強い放射線を受けないようにという配慮と言えます。しかし、30㌔圏外でも飯舘村では、地形的に風筋に当たり放射性物質の降下量が多いようで、単純に距離だけで放射性物質の飛散状態を議論するわけにはいきません。
放射性物質への対策として「花粉症」のような対策をすればよいと言われていますが、それは、「花粉も微粒子だ」ということです。マスクを付けるのが有効だし、家の中に持ち込まない配慮も大切です。ただ、放射性物質の方が厄介な物質と言えます。例えば頭髪に付着している花粉なら、放置しても何のいたずらもしませんが、放射性物質は、強弱は別にしても「微粒子から放射線を出し続けるので、除去する必要があります」。放置は出来ません体に付いた放射性物質は、頭も含めて洗い流すのが大事な対策になります。その意味では、帽子を被ることが有効になります。そして雨の時は、傘を差さないといけません。またはフード付のビニールカッパを着て、家の外で脱いで家に入るのがよいでしょう。逆に起毛したような生地の服は、払い落とすのに不向きだと言えます。放射性物質の微粉末に、どう対処すればよいかが解っていただけたでしょうか。

◎原発事故で出て来た放射性物質について

事故以前は、周囲の殆どの物が放射線を出していない世界だったにも関わらず、原発事故後は「放射性物質、放射性物質と騒がれています」。ナゼなのでしょうか。
既にお解りでしょうが、「今騒ぎになっている放射性物質は、原子炉が作り出した」ものなのです。先の説明でお解りのように、原子炉の燃料にしたウラン235が核分裂して、猛烈なエネルギーを発生させると同時に、炉内に大量の中性子が作り出され飛び交います。そしてその中性子が、周囲を取り巻くあらゆる原子の原子核内に入り込み(中性子捕獲反応)、放射線を出さない安定状態にあった原子核を不安定にしてしまうのです。その結果、原子炉内で大量の放射性物質を作り出してしまうわけです。(ウランが核分裂して出来る分裂後の新しい原子の多くも放射性を持っていますので、それらも加わることになります)
いずれにしても、原子炉内には原子核が不安定な物質=放射性物質が大量に作られてくる事になります。だから原子炉は、言い方を変えると「放射性物質への変換装置」でもあるわけです。膨大なエネルギーを手に入れる替わりに「生き物としての人間から見れば」、悪魔のような放射性物質を背負わされるといっても良いような装置でもあるのです。

◎「放射線」とは、どういうものか

「放射線」は、放射性物質より“自然に出て来るもの”なのです。出て来るのを止める人工的な方法は、現在のところまだありません。だから、出るに任せて出なくなるまで待つしか、他に対策が無いというのが現在の科学・技術の限界です。放射性がコントロール出来れば、強い放射能を持っている放射性物質も、「直ちに無害に出来る」ことになるのですが、有効な方法はまだ知られていません。
では放射線とは、どういう物なのでしょう。「放射線」は、歴史的には“光を当てていないのに写真乾板が感光した原因として推測されて来ました”。乾板が露光したのは、「目に見えない光線が当たったため」だろうと考えるしかなかったのでした。実験で調べていくと「目に見えない光線」のようなものが捉えられ、且つ、それらは3通り有り、電気的にプラスの性質をしたものとマイナスの性質のもの及び電気に影響されないものがあると確認されてきました。それらはそれぞれ「わずかにマイナス極側に曲がるもの」と「それより大きくプラス極側に曲がるもの」と「全然曲がらずに直進するもの」のような性質があることが判明しました。しかしその時点では、どんなものか解らないので、取り敢えず仮の名をギリシャ文字のABCに対応たせて付けられました。最初の物を「アルファー(α)線」次の物を「ベーター(β)線」直進の物を「ガンマー(γ)線」と呼びました。現在では後数種類飛び出すものがあることが解ってきていますが、放射性物質の「自然崩壊」からでる主要な放射線は現在においてもこの3種類です。
ただ、原子力問題の観点からすれば、これらの放射線に「中性子線」「エックス線」と呼ばれる放射線が加わってきます。そのため現在の検討対象となる放射線には「中性子線・ガンマー線・エックス線・ベーター線・アルファー線」の5種類あることになります。それらは、いずれにしても“飛び出してきている何か”だったのです。
5種の放射線で人体に危険な物から書けば「中性子線(中性子が連続的に飛び出してくる:大きいエネルギーを持っていて細胞への破壊力がある)」で、次に「ガンマー線・エックス線(共に光の仲間で電磁波である。貫通力が強く且つ細胞を傷付ける力が強い)」で、「ベーター線(電子の飛び出し)・アルファー線(ヘリウムの原子核の飛び出し)で、後の2つは比較的簡単に防ぐことができる」の順になります。ただ、原発から飛び出す放射線は、これらが混ざっている場合が多く、簡単に防御できるのは極々例外のケースになるでしょう。
「放射線が与える人体への害」を考える場合、これらの放射線が、体の細胞内の色々な物質とぶつかり、細胞を傷付けてしまうことによります(その顕著なケースは、細胞分裂中のDNAの鎖を傷付け異常細胞を作ってしまうことです)。
即ち、「放射性物質の出す放射線が細胞に害を与える」という図式で人体に作用してくるのです。

次に「放射性」とは、どういう事情から形成されてきた特性だったのかを見てみましょう。放射性物質が、放射線を出す性質(放射性)をもっていたのは、解ってみれば「飛び出してきた粒子等」の原子核内の居心地が良くなかったためで、「我慢の足りない腕白粒子(陽子と中性子)」が原子核から勝手に飛び出して来ていたのです(その飛び出してきた粒子達を放射線と呼んでいた)。そこで飛び出し粒子のα線・β線・γ線の正体を明らかにしようとして調べてみると、α線の正体は「ヘリウムの原子核(陽子2個と中性子2個。だから+2の電気を持つ)」だった。β線は「電子(−1の電気を持つ)」だった。γ線は、「可視光よりも波長の極短い電磁波(電気的に中性)」だったのでした。つまりこのような居心地の悪い連中が「原子核から飛び出して来ていた」というわけだったのです。飛び出してきた実物が解ると「家出先の事情」が見えてきます。
その第一点ですが、通常余り強調されませんが大事なことは、「放射性」の原点は「原子核の核内事情にある」ということです。放射線は、放射性物質から出るというボンヤリした表現ではなく、“放射性物質を構成する原子核から出て来る”ということなのです。その事実を踏まえると「放射線は、原子核由来のものである」ということが明確になります。そこで以下のことがよく理解できます。
α線が出る現象では、元の原子核から「陽子が2個出ますから、原子番号が二つ減ります」。即ち原子番号二つ下の元素に変わってしまったということになります。
β線が出る現象では、元の原子核から「電子が出ますから」これは解釈に苦しみます。原子核は元々プラス電気の集まりのはずで、マイナス電気の電子が含まれていると考えにくいからです。そうは言っても事実上電子が出ていることは否定しがたく、何とか説明を付けるしかありません。そうすると「中性子1個が、陽子1個と電子1個に分かれれば説明が付くことになります」。事実そのことは質量を測って実験的に明らかにされてきます(陽子は、中性子より電子1個分軽かった)。だからβ線が出る現象は、結局「中性子1個が陽子に変わり、余った電子が飛び出して来ていたこと」になりました。そうとなれば、元の原子核内では、「中性子が1個減り、陽子1個増えて、電子が出て来る」という変化が起きていたと考えられます。だったら原子番号が一つ増えます」。即ち、原子番号一つ上の元素に変わってしまったということになります。
γ線が出る現象では、現在ではγ線が出る幾通りかのパターンがありますが、粒子の出入りはなく、エネルギー的に余分なものを放出していると考えられています。だから元の元素が別の元素に変わるということは起きません。

“原子核が放射線を出すことで、核の事情が自然に大きく変わっていた”のです。だから、このことを「核の自然崩壊」と言い、α線を出す崩壊を「α崩壊」・同様に「β崩壊」と呼んでいます。核が、大きく割れる時は「核分裂」で、一部小さな変化の時は、「核の崩壊」と言っていることになります。
表面上、α線・β線・γ線という放射線を出していた現象が、それらの発生源で予想外だった元素転換という離れ業をやっていたのでした。放射線を出していたことが、放射性物質の原子核内での大きな変化の結果だったというのです。これらは、人類が知る以前のはるか昔から起きていた現象なのですが、見えないことは気が付きにくいと言うことを如実に教えてくれた実例です。解ってみたら「放射性物質の原子核は、“自然な成り行きで、自身の原子核を変化させて、別の原子核に変身して行っていた”のです」。自然に起きていたので、これを「原子核の自然崩壊」と呼んでいます。

◎ 同位体(同位元素)

放射性物質を考える場合、「同位体」という概念を知る必要があります。これは、先に「水素に3通りある」と話したことです。普通の軽い水素:Hと重い水素「重水素」2通り、デューテリウム:Dとトリチューム:Tと説明したところのことです。この場合、同じ水素でも、質量数が、1、2、3と三つあり、物理的な側面で少し違った性質を示すので、それらを別々に識別し、個々の物質としての特性を明らかにするために識別が必要なのです。とりわけ、放射性物質の特性から捉える「同位体」という識別法は、「同じ元素でありながら、質量数が違って(内部に持つ中性子の数が違って)来ると“放射性”を持ったり、持たなかったりするのと、“半減期”がそれぞれで違ってくるので、「同位体という識別レベルで」考える必要が生じるのです。陽子が二つ以上の原子核内に、中性子は「無くてはならないし、実は在り過ぎてもいけない」ようなのです。その間の事情を理解しておくための各元素の同位体で明らかにされた分類表みたいなものが出来ているのです。
昨今話題の「ヨウ素」で言えば、「ヨウ素の同位体」は37通りも存在しますこの37通りの同位体の原子番号は、どれも53で、53個の陽子を持っている周期律表で53番目のヨウ素という化学物質を表していますが、質量数では、108→144まで一つずつ違う37通り「ヨウ素」があるというわけです。中性子の数で言えば、一つずつ違って55個(108-53=55)から91個まであるというのです。同位体の表現としては、ヨウ素(記号でI)の横に書き加えられる108→144の数字でで示されます(記号で53108 )。左に書くも右に書くも上に書かれるのが質量数(質量数=陽子の数+中性子の数)を示しています。
「ヨウ素の同位体」は、37個あって、その中で、質量数127のヨウ素のみが安定なもの(放射線を出さない物)で、その他の質量数のヨウ素は、全て放射性(放射線を出す性質)を持っています。即ち、ヨウ素の同位体は、記号で書けば「I108⇒I144」と示され、これらの同位体は、放射性を持っているならそれぞれ違った半減期を持っています。同じ化学的性質を持つ物質でありながら、内部に持つ中性子の数が違えば原子核内はそれぞれの事情を反映してそれぞれの居心地になるということです。超超微小な世界でも、中性子1個の違いで居心地が微妙に違ってくることろが何とも不思議なものですね。

また質量数131の「ヨウ素」は、幼児の甲状腺ガンの絡みで話題に登っていますが、この同位体は、存在する量とヨウ素としては比較的長い半減期なので、注視されていると言えます。話題のヨウ素は、ウラン235の核分裂から出来てきたものですが、同じ同位体ならば、実は出来方は問題でありません。ヨウ素131は全て「半減期が約8日間」になります。同様にウラン235の核分裂から出来てきたものでも、陽子53個と中性子74個が運命をともにして出来てきた場合、質量数が127に成り、この場合は「安定な原子」として出て来ます。複数の同位体が安定なものもあります。ヨウ素はたまたま127以外は全て放射性を持っていたというわけです。放射性を持っているかどうかは、中性子の数が問題なわけです。

◎半減期と放射能の強さ

「半減期」自然崩壊で、今在る原子数が半数に減るまでの時間
放射性物質の振る舞いで、不思議で面白い性質があります。それが「半減期」というものです。この半減期というものは、「ある元素のさらに同位体毎に」違う値を持っているのです。半減期の意味は、実験室で「ある元素のその中のある同位体の原子の個数として“現在存在する個数”が半分になる時間が、同位体によって決まっている」と言うことなのです。
ヨウ素131の「半減期」は、8日間なので、最初の8日間で、初め在ったヨウ素131の原子数の半数がキセノン131に変わり、続く8日間で、残る半数の半数(1/4)がまた変換して行くわけです。即ち、半減期1回経過する毎に「元の原子の個数が半分になる」というわけです。どうして同じ仲間が減ったのを知るのか解らないのですが、仲間が減れば崩壊速度を落として、残りの半数がまた8日間で崩壊して行くのです。ここが不思議です。
原子炉で作られた色々な放射性物質は、色々な元素のさらに色々な同位体の混合物です。それらの同位体一つひとつに自然崩壊パターンが決まっていて、それぞれに固有の崩壊スピード(半減期)があります。崩壊スピードの速い原子核の時は「素早く崩壊して次の核に変わっていきます」スピードの遅い場合は、この逆です。その結果、短期間に崩壊してしまう原子核の仲間達は、放射性物質として誕生後、比較的速やかに姿を消してしまいます。放射性物質放出後、1ヶ月位すると放射能が下がるという理由は、この崩壊スピードの速い原子核が、急速に消えてくれるからです。この反対に、のんびり型の原子核は、しつこく放射能を維持することになります。半年後に残る放射能は、このようなのんびり型の原子核のためです。この辺を具体的に見ておきましょう。
半減期にも色々あり、超短期のものになれば、「マイクロ秒=百万分の1秒」で計るものから、「億年」単位のものまであります。ウラン238は長い半減期の代表で、半数に減るのに45億年掛かるので、現在の地球上でも放射性を持った状態で残っていたとも言えるのです。半減期の長短は、端的にいうと「地球上に居てる時間の問題」だとも言えます。それ故、「半減期の長い放射性物質は、いつまでも我々の生活環境に残って」放射線を出し続け影響し続けるということです。ただし、じっくり残るということは、崩壊する速度が遅いということでもあり、時々ポロっポロっと崩壊することになり、時間当たりの放射線量は小さくなります半減期の極短い放射性物質は、その逆で急速に崩壊が進み崩壊中の放射線量は大きくなります。長期に渡る放射能被害の主役は半減期の長い放射性物質だと言い得るわけです。核分裂生成物の中で、半減期の長い原子としてよく知られているのは、セシウム137(30年).ストロンチウム90(29年)等があります。

○放射能の強さは、

単純に考えれば、1秒間にどれだけ多くの原子核か崩壊して放射線を出すかで測られます。だから「1秒間に1個原子核が崩壊して放出される放射線の強さを1ベクレル」と定義しています。結局、ベクレルは、1秒間に飛び出すα線やβ線等の個数を数えた数値になります。そうだとすれば、ベクレルは原子核の崩壊(原子)の個数によって数えられるため大きな数になります(分子・原子の個数は、1モルで1アボカドロ数個(超大きな数)あるわけだから)。原子はとても小さい粒なので、もの凄く多数集まってやっと微粒子程度の大きさになるわけで、100ベクレル/リットルというような値は、そう大した数値でないと思われます。ただし、どんな放射線が出ているかには関係しない値なので、ベクレル数は、単位時間でどれだけ多くの原子核が崩壊しているかの目安で、そのままでどれだけの危険性を持つかは示せない数値ということでもあります。

◎崩壊過程を繰り返し、最後は安定な原子核になる

放射性物質という名詞は集合名詞で、その言葉の実体は、様々な原子の、そのまた様々な同位体の集合で、多種多様の原子核が混ざっています。それらの同位体の中の放射性を持つ同位体は、それぞれ決まった崩壊系列で次々とα線・β線・γ線等を出しながら自然崩壊を繰り返し、最後には放射線を出さない状態(安定原子)になって落ち着きます。現在では、放射性物質の崩壊過程が細かく解明されています。ある物質は、始めα崩壊をして、次もα崩壊して、その次はβ崩壊をすると言った具合に実験的に解っています。そして、最後に辿り着く原子も解っています。それを概略で示せば、「鉛:Pb」より質量数の大きい原子では概ね鉛に、鉛より質量数の小さな物では、それらの安定原子に成ったところで自然崩壊は終わりです。
これらの変化は、原子核(原子)1個1個で起き、しかも同じ原子であっても質量数が違えば崩壊系列は違ってくるので、「集合体としての放射性物質」の内部では、何とも複雑でたくさんの自然崩壊が同時に進行します。しかし、自然崩壊の3パターン(厳密にはもう3種あり)は、それぞれ共通で、α崩壊・β崩壊・γ崩壊のどれかになるわけです。α崩壊では、原子番号二つ下の元素に変身し、β崩壊では、原子番号一つ上の元素に変身して、γ崩壊では原子番号は変わらない形で、原子核が変わり、そうなれば当然原子が変わり、「元素が変わってしまう変換」が続くのですから、「物質の不変不滅」ということを信じ込んでいる古い頭にとっては、つぶさに信じられない位の自然観の変遷になるものと思われます。(原子核の崩壊過程や半減期を調べるには、『理科年表』が便利です)

◎「放射性物質が人体にもたらす害」

人体に直接被害を与えるのは「放射線を浴びること(放射線被曝)」によってです。
「放射性物質」が、人体に与える被害は、ワンクッション置いて、2段階目で生じます。放射性物質が皮膚に付いたり、体内に取り込まれたりしただけでは、それで直ちに被害を受けるのではないのです(毒物が体の細胞を直ちに殺すといった害を与えるのではないのです)。被害が出るのは、放射性物質が出す「放射線」を体の細胞が受けて「正常な生命活動が維持できなくなった」場面からです。その時、細胞は死滅するかガン化するかして、正常な細胞としての働きが出来なくなるのです。そうは言っても、どの細胞も同じ強さで害を受けるのではありません。放射線に強い細胞と弱い細胞があります。活動性の高い細胞が相対的に害を受けやすいとされています。生殖細胞や成長期の子供の細胞などがやられやすいのです。

それに関連して、人体の放射線被曝に対しては、大別して2つのパターンがあります。その一つは、原発で働いているような人が受けるケース(短期の大量被曝)、もう一つは、一般人が受けるようなケース(長期小量被曝)です。今原発内部で働いてくださっている人達は、強い放射線を全身に浴びているなら、全身の細胞が傷付くことになります。そして、受けた放射線量が「シーベルト単位」で表せるくらい(数シーベルト)の量ならば、一挙に多くの細胞が異常になる可能性が高いというわけです。他方、弱い線量の被曝を長期間浴びる(長期小量被曝)の場合では、チェルノブイリのデータ等で考えてみると「DNAの修復能力が働いて、そう心配になるほどのことはない」ようです。ただ例外は、妊婦と乳幼児で、成長ホルモンを作る甲状腺に放射性ヨウ素が貯まると幼児に甲状腺ガンの発症が増えたというチェルノブイリのデータがありますだから妊婦と乳幼児は、可能ならば危険とされている水や食品を避けるのが良いでしょう。ただ、十分大きくなった青年・大人では、ヨウ素に対しても、他の元素含有の放射性物質に対しても、チェルノブイリのデータとしては、さほど気にすることはないようです。危険だ危険だと気にしすぎて「免疫力を落としてしまわないように」する方が大事だという指摘もなされています。私も、今回色々調べてみて、一般人の長期小量被曝に関しては、避難指示地域に長時間入るといった、無茶なことをしない限り、“ほぼ心配しなくて良いようだ”と判断しました。人間では、乳幼児から成長期の範囲を例外に、ほぼ大人になってしまえば“放射線をそれほど気にしなくても良いようだ”と思えるようになりました放射線を受けてかなり後でガンに罹る確率が0.5%アップするという数値が強調されていますが、日本人の死因でガンが半数に近い時、50%⇒50.5%に成ったからといって「本当に有意な差」と言えるのでしょうか。私も、ここの所を冷静に考えてみて、“大人の場合は、タバコや酒の飲み過ぎよりも大きな影響を受けることがない”と納得したのです。そのことが納得できて、私は、マスコミからの情報や危険を煽っているように思える情報が無責任に思えるようになりました。そして多くの人々が「放射線に対して過剰に反応し過ぎている」と思えるようになりました。
放射線が人体に及ぼす影響に関しては、NPO法人あいんしゅたいん(私も会員の一人)のホームページを見てください。免疫学者の宇野博士が詳しく解説してくださっています。宇野博士のまとめて下さった内容等で、「余り神経質になることはないのだ」と思わせていただいたわけです。

ひらがなで「あいんしゅたいん→検索 でお願いします。

上記の宇野賀津子カヅコ先生が、『低線量放射線を超えて』福島・日本再生への提案:小学館101新書(720円+税)の本を出版されました。関係者の皆様から待たれていた本だと思います。どうぞお求め下さい。加筆:2013.8.26

◎この後、放射性物質とどう付き合うか

日本は、広島、長崎と今度で3度目の放射能汚染を被ってしまいました。そして今言えることは、ひどく汚染されてしまった土地では、比較的長期戦を覚悟しなければならないだろうということです。それさえも「今後大量の放射性物質が撒き散らされない」としてのことで、再度爆発に至るようなことがあれば、現在の対策でさえ十分でない場合が生じてきます。今のまま無事収束していってくれることを祈るばかりです。
これまでの政府や公的情報の取り扱いを見ていますと「突然、水を飲むな。この野菜は、売るな。食べるな」と言った調子で、根拠も示さずただ命令調にニュースが流されてきただけです。東電からも、保安院からも、政府からもコメントは出るけれど、その内容はしばしば食い違い、間違いが訂正され、何を信じたらよいのやら国民は信頼を寄せるべきものを持たない状況で推移したように感じられます。この先、まだまだ長く放射性物質と付き合って行かざるを得ないので、どう対応すればよいかを考えておきましょう。

◎行政・JA等現場関係者が「放射能測定器を持とう」

それから、農作物の放射能汚染に関して、野菜の種類と「○○県産」という地域指定で食べないようにという報道が為されていますが、科学的には「かなりいい加減」です。露地物とビニールハウス・温室での産物と同じに扱うのが妥当かどうか。外気の取り入れの時に放射性物質が多く飛んでいたときなら、ハウス物も汚染は免れませんが、露地物の汚染に比べればかなり軽微になると予想されます。それにも関わらず産地の県別で食べられる食べられないを規定するのには無理があります。最も確かなのは、同じ農地で取れた野菜から適当なサンプルを取り出し、放射線量を実際に測定して、規定値より高い農作物等は「検品ではねて」正常値範囲内の製品は販売ルートに乗せるようにすることでしょう放射線量は、元々産地名等「ことばで定義できるものではなく」測ってこそ明確になるものです。測定してこそ意味のあるもので、汚染の程度がひどい物を確実に廃棄処分にすることが大事で、「風評被害を防ぐ」意味からも実測値で、販売なり廃棄なりを決めるべきものでしょう。そのためには、全国にある休眠中の放射線量計測装置を原発周辺に集め、さらに新品測定器を増産して貰い、しかるべき検査済みの認定をして、販売ルートに乗せて貰うのがよいと思われます。この処置はまだ相当長期間しなければならない対応なので、行政・JA等現場関係者は、「自分で測定できる体制」を作るべきでしょう。そうすれば地表の放射線量も細かく測定できるし、希望者には直接測定してあげることも可能です放射線量の簡易測定は装置さえあれば簡単に行えますし、持ち運びも出来ます。だから是非とも必要なところには常備しないといけません。都合の良いデータのみを発表しているようにも思える東電や政府の発表する値にどれだけの信憑性があるのか、国民の多くは信用できないと感じていると思われますので、方々で実際に計れば信用できるし納得できるものと思われます。(精密測定は、高度な設備と時間を要するので、ここでの話は簡易測定器での話です)

○今住んでいるところ(元の家のあるところ)の汚染度は?先ず汚染度を知らねば

このまま事故が収束することを前提にして、今居るところ・元の家のあるところの汚染状況を知らないと判断のしようがありません。この後順調に推移すれば、放射線量は、毎日低下するのは間違いのないところですが、1ヶ月後、三ヶ月後、半年後に、どれくらい下がり、通常の生活が出来る値かどうかです。半減期の短い放射性物質は、急速に放射線を出して、放射能を下げますので、比較的短期間に放射線量は下がります。しかし、下がって今、「いくらの線量があるか」です。結局、自分で放射線量を測るのが最も有効な手段だと言えます。毎日、毎日が無理なら1週間に一度、かなり細かく測定地点を決めて放射線量を測り続け、住民にデータを提供し続けることが是非必要です。値が順調に下がり続けていれば、その後の放射性物質の放出が止まったと考えられますので、「元の家に帰る期待が持てますが、値が上がりでもすればガッカリしなければなりません」。汚染の程度が解ったら、「汚染度の値」をどう解釈するかどうかは、ネットから情報を採って、具体的にどう対処するかが考えられるでしょう。
軽い汚染地なら、しばらく待って元の家に戻る可能性もあるでしょうが、汚染がひどければ当分帰れないと判断するのもやむなしかなと思われます。それでも、短時間の帰宅は可能のように思われます(データ発表が無いので推測で書きますが、放出が止まって1ヶ月経てば、数時間帰宅することはそう大きな被曝にならないでしょうから。計測して安全を確認して行動されますように)。どういう選択肢があるかはデータ次第です。地面・空気・水・農作物や牧草等の汚染度を把握することが先決事項になります。

投稿日 2011.4.15

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